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  8.6 ヒロシマ平和へのつどい2018
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 ◆8.6 ヒロシマ平和へのつどい 2018
 

「8・6ヒロシマ平和へのつどい2018」講演を終えて


「8・6ヒロシマ平和へのつどい2018」で講演していただいた金鐘哲さんから、以下のようなエッセーを送っていただきましたので、ご紹介します。

金鐘哲(『緑色評論』発行・編集人)
翻訳:金亨洙

  8月の最初の週末、日本の広島に行ってきた。毎年この時期になると広島では日本や世界から平和を願う数多い市民や活動家たちが集まり様々な集会が行われる。言うまでもなく8月6日が広島にあの原爆が投下された日であるからだ。

  私が今回、初めてあの広島を訪れたのは、長らく平和運動を行ってきた、とある日本の市民団体のおかげであった。「8・6ヒロシマ平和へのつどい2018」と言う名のもとで今年の集会を準備するなか、最近の朝鮮半島の情勢に関して韓国人の話を聞いてみようという案が出たらしい。そこで私に講演の依頼がきたのだが、その依頼を受けた5月には今年の夏の暑さがこれだけ酷いことになるとは予想できなかった。約束の日が近づいてくるにつれ、暑さに弱い私はソウルより少しも劣らないはずの広島の暑さの中に入っていくことが、非常に心配に思えて来た(どこかで読んだ証言の記録によると、原爆投下から奇跡的に生き残った生存者たちの鮮明な記憶の一つは、73年前のあの日の朝、爆弾が落とされる直前のヒロシマはとても暑かったと言うことだそうだ)。

  しかし、暑さのせいで広島行きをキャンセルするわけにはいかなかった。それで、8月5日、酷暑のなか広島にて講演・討論会が行われた。韓国からの見ず知らずの人間の話を聞くために、かなり広い講堂には多くの聴衆が集まっていた。講演の冒頭で私は、朝鮮半島問題に関する言わば専門家の識見ではなく、韓国の一市民・知識人のアマチュアとしての常識を話すと言い、「安保論理から平和共生の道へ」というタイトルの発表をした。そして1時間余り参加して下さった方々と多様な意見を交わした。

  私の講演の要旨は単純なものであった。つまり、第2次世界大戦以降朝鮮半島と東アジア、延いては世界全域に渡る第一の支配論理は安保論理であり、その安保論理のせいで人類社会(特に朝鮮半島と東アジア)においては如何なる創造的な生き方の可能性も徹底的に遮られて来た。最近、「ロウソク革命」以降韓国に民主的な政権が成立し、その後朝鮮半島を中心に展開されている平和ムードは、安保論理に囚われて来た既存の世界秩序を打破するのみならず、我々の想像力を開いてくれる決定的なきっかけになり得る。そしてそうなってきた際、朝鮮半島の住民は言うまでもなく、東アジアの人々は未だかつて経験したことのない、より高い質の人間的な生き方を自由に探索できる機会にめぐまれることになるであろう。そして、このせっかくの機会を生かすのに最も必要なのは鳩山由紀夫元日本総理(2009~2010在任)が唱えた「友愛に基づいた東アジア共同体」といった概念、あるいはそれに近き政治哲学であり、そのために欠かせないのは民族や国境という境界を超えた、東アジアの市民たち同士の自由で活発な交流と対話、連帯に向かっての努力である…。

  講演が終わるとフロアからの質問と意見の発表が活発に続いた。質問の中には私としては答え難いものも多かった。例えば、「一帯一路」という一大プロジェクトを掲げ、物凄い勢いで勢力を広げている現在の中国の指導層に「友愛に基づいた東アジア共同体」のような政治哲学を期待することが現実的に可能なのだろうか、という質問があった。この質問にすっきりした答えを出すのは私の能力を超えることだった。しかし、私は昨年10月の第19次共産党大会にて習近平主席が中国の未来像について語りながら、殊に小康社会、美麗社会、そして生態文明社会として表したのは、単なる政治的な修辞というより現在の中国の政治指導者たちの本音が含まれた抱負を表現したものではないだろうかと、そうであればそこには東アジア共同体の潜在的可能性があるのではなかろうかと、恐れ憚りながら答えた。

  しかし、このような難しい問題以外にもより根本的な憂慮も示された。それは、東アジア共同体という概念自体には何ら問題もないが、その言葉にはどこか「アジア主義」を標榜しながらも実際においてはアジアに対する侵略を正当化するイデオロギーとして機能した、日本帝国主義時代の右翼思想を思わせるところがあるという指摘であった。この指摘に対して私は、我々が目指すべき東アジア共同体とはどこまでも「友愛」に基づいたものであり、そのためある特定の国家が東アジア共同体の構築を主導するというような発想自体を捨てるべきだという点を強調する必要があると、ただ常識的な答えしかできなかった。

  しかしフロアは全体的に韓国がロウソク革命を通して民主的政権を成立させ「希望的」社会になり得たことを、非常に羨ましがる雰囲気だった。参席した方々は殆どが68年学生闘争を経験した高齢者の方で、大概の方が年金生活者のようだった。私の目にも問題は見えてきた。社会に不条理が溢れ、総理をはじめとする政治家や官僚たちが絶えず嘘ばかりをついている状況が続いているにもかかわらず、日本の若者たちは政治には何の関心もなく自らの生活ばかりに埋もれ、飼育された家畜のようになりつつあると、誰か嘆いている声が聞こえてきた。それが事実かどうか、私にはよく分からないが、一時世界的に最も強烈な反体制運動を展開していた往年の学生運動家たちの嘆息が、私の胸を打った。(彼らの発言を聞きながら私は昼夜を問わずスマホに夢中になっている昨今の韓国の若者を思い出し、やるせない気分になった。)

  ところが、今度の広島行きで私が得た最も大きな収穫の一つは栗原貞子(1913~2005)という詩人の存在を知ったことであった。栗原は1945年8月6日ヒロシマに原爆が投下された時、爆心地から4キロメートル離れたところに住んでいた住民だった。彼女は原爆投下直後から完全なる廃墟と化した現場に向かい、見るに堪えないあの惨状を目撃し、極度の苦痛のなか死に、喘いでいる被爆者たちを助けるために必死の努力をした。その経験から彼女は、戦後日本における数少ない優れた「原爆詩人」となった。しかし彼女は原爆の残酷な後遺症やその惨状を記録するにとどまったわけではなかった。彼女は社会主義を信奉するご主人と共に、早くから日本のアジア侵略を批判し、反対していた反戦思想家でもあったのだ。

  彼女は生涯を通して反戦、反核、平和のために人間である我々が如何にすべきかということを、詩と行動を通じて問い続け、また訴えた。その延長線上において、彼女は日本社会が全般として原爆の犠牲者としての立場を強調しながら「平和」云々するのは、根本的に偽善で虚偽であると指摘し、ヒロシマの惨劇だけではなくアジア・太平洋地域で犯した日本軍国主義の蛮行に対する歴史的責任を認識すべきだと、繰り返し強調した。しかし戦後にも日本は朝鮮戦争やベトナム戦争に積極的に関与し、再び「他者の犠牲」の上で経済復興を成し遂げ、結局ヒロシマの悲劇から一つも学んだことのない結果となってしまったと、厳しく批判し続けた。そのため彼女は日本社会の中で酷い孤立を耐え続けるしかなかったが、少数の良心的な人の中では尊敬の対象となった。

  韓国には殆ど知られていないこの詩人の詩を読んでみると、その根底には真の詩人であれば誰しもがもつ共通の資質とも言えるアナキスト的精神が熾烈に生きていることを感じ取ることができる。彼女は「文学は政治に従属するのではなく、政治に先行するものである」と言い、また「どの時代にも政治的支配に対して文学は反対の立場をとってきた」と述べ、文学の意義と役割に関する強烈な信念を語っていた。同時に「政治的無知と無関心」こそ「平和と民主主義の敵」であと、強調してやまなかった。

 国益という論理、安保という論理をもって、いつまでも真実を隠蔽し世の中を危険にさらしている支配層によるありとあらゆる弾圧や世論操作にも、我々が人間としての感受性を失わず平和と民主主義を守るための戦いを続けられるのは、結局栗原のような「不敗の精神」を持った詩人の存在のおかげかもしれない。

(この文章は8月10日付「ハンギョレ新聞」に掲載されたコラムの一部を修正・加筆したものである。)


「8・6ヒロシマ平和へのつどい2018」講演録


1)金鐘哲氏講演録: 安保論理を超えて平和共生の道へ
2)栗原貞子「崩れぬ壁はない – 三十六年と四十六年と -」

安保論理を超えて平和共生の道へ
— 昨今の朝鮮半島平和ムードについて —

金鐘哲(『緑色評論』発行・編集人)
翻訳:金亨洙

1.現在の南北対話の背景と韓国の民主化運動  

  本日、この「広島平和への集い」において皆様とお話できますことを大変嬉しく思っております。ご存知のように昨年まで朝鮮半島には戦争前夜の空気が漂っておりました。しかしながら、年を越してから雰囲気は急変します。北朝鮮の金正恩委員長は新年の辞にて非常に重要な発言を行います。つまり、7回に渡る核実験と大陸間長距離ミサイル開発の成功を通して北朝鮮は核武力を完成した、今後は経済建設に力を注ぐと宣言したのです。

 私はこの発言を聞いて、北朝鮮と韓国が対話再開に向けて動き出すだろうと、そして北朝鮮は韓国を通して米国との関係改善をはかることと予想しました。米国が主導し国連で決議された強力な経済制裁の圧力を北朝鮮がこれ以上耐えるのも難しいでしょうし、絶えず核兵器とミサイルの性能を発展させていっても、もはや行けるところがないことも明白な事実だからです。そして最近の北朝鮮の社会経済の状況は以前とはかなり変わっていると、私たちは聞いております。何百万人の平壌の市民は携帯電話を持っており、北朝鮮全域に500余の自由市場(ジャンマダン)経済が活気付いているということです。1990年代における非常に厳しかった飢餓の状況を、国家の助け無しにほぼ自力で乗り越えてきたのが北朝鮮の人民たちです。彼らの生活向上を求める要求に北朝鮮当局がこれ以上背を向けられなくなったのも重要な事実です。したがって、北朝鮮当局が南北間、そして米朝間の関係改善を積極的に模索するであろうということは十分に予想できたことです。

 それにタイミングよく平昌冬季オリンピックが開催されました。金正恩委員長の発言の意味を理解していた文在寅大統領は北朝鮮がオリンピックに参加するよう積極的に促し、北朝鮮もこれに快く応じました。そこで北朝鮮と韓国の交流が10年余ぶりに再開され、これを基についには4月27日に板門店にて歴史的な南北首脳会談が開催されました。

 日本からは板門店会談をどうご覧になったか分かりませんが、韓国の我々にとっては感激極まりない出来事でした。南北の首脳会談は、金大中や盧武鉉政権時にも行われました。しかし今回の会談は質的に異なりました。板門店で出会った両首脳からは平和の道へと進みたいという熱意が伝わってきました。文在寅大統領は対話に乗り出してきた金正恩委員長の決断と勇気を重ねて讃えましたし、北の若い指導者は南の指導者の言葉を謙虚に受け止め、終始礼儀正しい態度を見せていました。もちろん、このような言動も単なる見せかけかも知れません。しかし、独裁者には似合わない、そのような「演技」まで見せながら朝鮮半島の緊張関係を終わらせたいという自らの意思を表したのであれば、それはむしろ彼の平和に対する熱望がとても大きく、またそれが本物であることを意味するとも解釈できます。

 今回の板門店会談の特別な点は他にもあります。つまり、今度こそ朝鮮半島を囲んだ冷戦構造が真の意味において崩壊し、新しい南北関係および国際関係が築けられる兆しがかなり具体的に垣間見えたという点であります。朝鮮半島と東アジアに平和体制を構築するには様々な条件が整っていないといけません。その点、今は絶好の機会だと思われます。

 今まで朝鮮半島の諸問題の解決を妨げてきたもっとも大きな要因は、当事者である米国と北朝鮮、そして韓国の国家権力が相手の意見に耳を塞いでいたことだと言えます。ところが、現在は幸いにも南北はもちろん米国のトランプ政権もが北朝鮮の核問題の平和的解決を、実際に望んでいる状況となりました。

 周知のようにトランプ大統領は今政治的に相当厳しい状況に置かれています。それは彼が大統領に就任して以来見せてきた乱暴な言動と理性的とは言えない一連の政策の当然な結果だと言えます。しかしながら、トランプ氏も畢竟は政治的な支持基盤の拡大を通して今年の秋に行われる中間選挙での勝利と再来年の次期大統領選挙における再選を望んでいることでしょう。その彼が歴代の大統領たちは解決できなかった難題、つまり北朝鮮の核問題を解決するのであれば、彼にとって非常に大きな政治的資産になるに違いありません。

 事実、昨今の朝鮮半島の情勢は関連している当事者たちの利害関係が運良く合致してもたらされた、稀に見る状況です。単刀直入に言えば、従来の米国の北朝鮮政策は「現状維持」政策でした。北朝鮮と米国は、時には厳しい言葉を交わしながらすぐにでも戦争に突入するかのような態勢を演出してきましたが、実際において北朝鮮には米国を攻撃できる能力も、その理由もありません。そして米国も実際に戦争が勃発するのであればとてつもない被害が双方にもたらされることを重々承知しています。つまり、戦争はお互いにおいて脅迫の文言にすぎません。

 そして最も重要なことですが、朝鮮半島における緊張状態が続くことは、米国の実質的な支配勢力、即ち「軍産複合体」の利益に符合します。東アジアにおける冷戦構造がこれだけ持続してきた理由も結局はそのためだと言えるでしょう。

 ところで、そのような米国政府がなぜ態度を変えたのでしょうか。明確に説明することはできません。しかし、二つほど重要な理由を挙げられます。まず一つ目は、トランプ大統領が軍産複合体とあまり関わりのない人物であるという点です。米国優先主義を主張するという点において、トランプ氏もアメリカの他のエリート政治家たちと変わらないのですが、不動産業で富を得た彼は主流既得権層の支援を受けることなく大統領に当選されました。したがって、軍産複合体の利益を優先的に考慮する理由がない、例外的な政治家だと言えます。もう一つの要因は米朝首脳会談の必要性をトランプ大統領に切実に説明し、ついにはその説得に成功した文在寅大統領の仲裁者としての役割です。

 実は、私は文在寅大統領がとってきた姿勢と役割こそ最も大事であったと申し上げたいです。彼が、北朝鮮を対話の場に導き出し、また米国の大統領を説得するのに成功したのは、平和に対する彼の切実な思いがあったためでもあるでしょうけれども、朝鮮半島の将来に対する彼の堅実で、また現実的なビジョンのためでもありました。例えば彼はとある公の場で「南北が共に暮らすかどうかはともかく、お互いに干渉せず被害を与えることなく共に繁栄し、平和に暮らせるようにしなければいけない」と発言したことがあります。この言葉には所謂「吸収統一論」を排除する立場が表明されています。思うに、文在寅大統領のこの発言は北朝鮮を対話路線へと転換させた大きな力となっていたのではないでしょうか。

 文在寅大統領のこの発言は、観念的で非現実的な主張ばかりを繰り返しても、それは現実的には状況をより難しくするだけだと、痛感した結果だと思われます。そしてそれだけ分断体制と冷戦構造を乗り越えていこうという思いが切実であることを意味するでしょう。

 この70年間の分断体制が朝鮮半島の住民たちにとって如何なる鎖となり、また束縛であったか、日々痛いほど痛感しながら生きてきた当事者でなければ、平和を願う想いというのを実感するのも、理解するのも難しいでしょう。その上、朝鮮戦争以降の停戦体制のなかで銃声は止んだにしろ、お互いこれ以上ない仇敵のように銃を向け合い、終わりの見えない敵対関係のなかで生きるしかない、険しい状況が続いてきました。それで韓国と北朝鮮には長らく非常体制が維持されてきたのです。非常体制のなかでは人間らしい自由な暮らしは根本から否定されます。独裁支配体制の世襲を固く守ってきた北朝鮮は言うまでもなく、韓国においても長らく独裁政治と軍事政権による暴圧政治が繰り返されましたし、市民の権利と人権が根本から抑圧されてきました。

 大韓民国の憲法はこの国が民主共和国であると宣言しており、全ての権力が国民から生ずると明示しています。にもかかわらず、実際において1948年大韓民国政府が樹立して以来韓国を実質的に統治してきたのは憲法ではなく国家保安法でした。この国家保安法というのは思想、言論、表現、結社の自由を抑圧する目的でつくられた、日本の植民地時代の治安維持法を受け継いだ悪法です。もちろんこれは韓国で共産主義を取り締まるための法律です。したがって、国家保安法は反国家団体(北朝鮮)に対する協力はもちろん、好意的、肯定的な意見表明も禁止しました。そしてそれに違反すると重刑に処されました。結果、歴代の独裁政権はこの法律を、政権に批判的な人々や、また反対勢力の弾圧に積極的に活用しました。それで数多い良心的な知識人たちや学生、労働者、市民、海外の同胞に北朝鮮の工作員という嫌疑をかけ、無慈悲に人権を蹂躙してきたわけです。絶対的な権力が思うがままに人々を逮捕し、拷問し、また殺害までしてもこの全ての国家的暴力と悪行が国家保安法違反といった論理で正当化されてしまう状況の中、人は結局奴隷として生きるしかありません。事情を知らない外国の方は、分断というと少し不便で不安な状況だと思うかもしれません。しかし、分断された朝鮮半島の住民にとって、それは口では言い難いほどに苦しい抑圧と恐怖、そして極端に不合理で不条理な生活を体系的に強要されるシステムとして作動してきました。

 「ロウソク革命」を通して誕生した新政権の文在寅大統領は人権弁護士出身です。だからこそ彼は国家保安法の弊害を誰よりも良く解っています。それで彼は国家保安法という一つの法律の改廃よりもこの国家保安法の根本的な存立根拠、つまり敵対的な南北関係の解消が必要だと思っているのかもしれません。大統領に就任してすぐに直面した北朝鮮の核危機状況のなかでも、以前の保守派政権のように安保体制の強化のみを強調するのではなく、北朝鮮が対話に応じるように繰り返し訴えたのはそのためであるでしょう。

 ここで私が特に強調したいのは、文在寅大統領のこのような対話路線は、戦争の恐怖はもちろん奴隷的な生活を強いる「安保論理」からも逃れることを熱望している多数市民の絶対的な支持を基盤にしているという点です。つまり、今ようやく朝鮮半島に訪れてきた平和ムードは、多数の市民がロウソクを持って広場に集い、民主主義を求めた結果だと言えます。

 2016年の冬から2017年の春まで続いた韓国の大規模のロウソクデモは、無能で腐敗した政権の崩壊だけをもたらしたのではありません。ひいては朝鮮半島の冷戦構造を終わらせ、平和体制をつくりあげる起爆剤になったと言えるでしょう。これは非常に重要な事実です。つまり、市民が心を一つにして能動的に行動するときに民主主義は蘇り、その結果自らの運命を根本から改善できる可能性が生じてくるという真理を、我々はもう一度確認できます。


2. 朝鮮半島冷戦構造の終息が持つ世界史的意義

  冷戦構造が清算され、それで人々の生活を根本から縛り付ける安保論理の支配から逃れることができたら、朝鮮半島の南と北には、たとえ統一は遠い未来のことだとしても人間らしい生活に対する新しい模索と実験が自由に行われるに違いありません。しかし考えてみれば、これは朝鮮半島の住民たちだけに重要なことではありません。朝鮮半島の緊張状態が解消されるのであれば、それは今日残っている最後の冷戦地域の一つが消滅することを意味します。ならば、今まで世界を支配してきた安保論理は著しく弱体化するだろうと充分に予想できます。

 私が思うに、複合的な危機に直面している今日、最も必要なのは平和な共生の思想とその実践です。ところが、この平和な共生への道を妨げる最も大きい障害は、政治・社会的体制と理念の違いを認めようとしない冷戦的思考、そしてそれと一対になっている安保論理だと言えます。その点、朝鮮半島の冷戦構造の終息は世界史的にも非常に大きな意義があります。

 振り返ってみればこの70年間米国が世界の覇権国家として君臨できたのはその膨大な経済力と軍事力だけのためではありませんでした。何よりも第2次世界大戦において米国が最大の勝者となり、そしてソ連という新しい「敵」を作り出し、その敵に対抗するための安保体制を集中的に構築したことによって可能になったと言えます。そしてこの安保体制の強化に決定的に寄与したのが朝鮮戦争でした。世界大戦が終結され、米国の政府と支配層としては国民に巨額の安保及び国防関連予算の必要性を納得させるための名分がなくなりました。その時、都合よく朝鮮戦争が勃発したのは、米国の国務長官ディーン・アチソンが言ったように、「天佑神助」でした。その結果朝鮮戦争はこんにち米国の安保体制を構成する核心的な機関、即ち国家安保会議(NSC)やCIA、ペンタゴン等の新設ないし強化に重要な口実となり、延いてはその後米国と世界を実質的に統治することになる「影の支配者」、軍産複合体の形成にも決定的な影響を与えました。

 そしてその朝鮮戦争が終結することなく長らく停戦状態が続いたのは、米国の覇権的世界支配と軍産複合体の温存や拡大にも大きく役立ったと言えます。そればかりではありません。1990年代の初め頃ソビエト社会主義圏が崩壊するにつれ突然「敵」を失ってしまった軍産複合体からすれば、朝鮮半島の緊張状態や中近東地域における不安な情勢が変わらず持続しないといけませんでした。この両地域における戦争、あるいは準戦時状況が終息に向かえば軍産複合体の存立根拠が消滅してしまうからです。

 皆様もお分かりだと思いますが、この数ヶ月間の朝鮮半島の平和ムードについて世界の主要メディアが見せた反応は非常に否定的なものでした。保守、リベラルを問わず世界の大概のメディアがそうでありました。その中でも日本のメディアは特異でした。日本の主要メディアは最近の朝鮮半島の情勢の変化が如何に重大な歴史的意味を持つことであるかを完全に無視して、ほとんど例外なく「拉致問題」ばかりを集中的に取り上げていました。私にはこのような日本のメディアの態度は情けないというよりは、あまりにも安易でまた愚かにしか見えません。

 ところで、メディアがこのような態度を見せてくるのはなぜでしょうか。彼らは今まで北朝鮮の核問題の解決に失敗してきたのは北朝鮮側の騙しのせいだと断定し、今度も北朝鮮の「時間を稼ぐための術策」だと主張しています。しかし、このような論調は言論の基本的な責務である「事実確認」さえもない単なる主張にすぎません。これについてここで詳細に説明する余裕はありません。但し、長い間北朝鮮の核問題に実務的に携わってきたジョン・メリル国務省情報調査局元北東アジア室長の話に耳を傾ける必要があります。彼は5月2日付の『京郷(ギョンヒャン)新聞』とのインタビューにおいて、北朝鮮の核問題が解決に至らなかった責任は北朝鮮側にもあるが、米国と韓国側にもあると明確に指摘しています。つまり、米国と韓国も北朝鮮との間に交わした約束を破ってきたということです。

 それなのになぜ世界の主流メディアはまるで北朝鮮がペテン師でもあるかのように一方的に決め付けながら、せっかくの対話と交渉の努力に水をさそうとするのでしょうか。様々な理由があるでしょうが、結局のところ彼らは従来の安保論理を基にした世界秩序の変更を望まないからではないでしょうか。それに彼らには朝鮮半島の住民たちが感じる平和に対する切実さや強い思いもあるはずがありません。万が一朝鮮半島で戦争が勃発したとしてもそれは彼らにとっては「他人事」であり、せいぜい対岸の火事に過ぎないからです。

 有力なメディアが既存の秩序の変更を望んでいない理由を推察するのは難しいことではありません。今日大きな影響力を持つメディアはほとんど例外なく商業的論理に忠実なコーポレートメディアです。したがって、彼らの利害関係は世界秩序を実質的に支配している「軍産複合体」と直接乃至間接的に関わっているはずです。そのため軍産複合体の顕著な弱体化をもたらす可能性の高い朝鮮半島冷戦構造の終息を、彼らが歓迎するはずもありません。

3.東アジア共同体構築への展望

 しかし既得権勢力のありとあらゆる妨害にもかかわらず、私は最近の朝鮮半島の平和ムードが逆行することはないだろうと思っております。関連する当事者たち、つまり現在の米国、北朝鮮、韓国の当事者たちが自らの必要のためにも平和を強く望んでいるからであります。

 もちろん韓国にも平和を歓迎しない既得権勢力が存在します。彼らは70年間朝鮮半島の分断と安保体制を利用して特権を享受し私的利益ばかりを追求してきた集団です。しかしロウソク革命を経て彼らの力は著しく弱化されました。これは去る6月に行われた地方選挙において明白に証明されました。守旧勢力を政治的に代弁している「自由韓国党」は、その存立が危うくなるほどまで完敗しました。

 いま最も懸念すべきは米国エリート層の動向です。現在トランプ大統領は「ロシアゲート」で政治的に追い込まれており、対外的にも伝統の友邦または同盟国とあまり良い関係を築けておりません。そういった中で、欧米のメディアによって長年悪魔のように描写されてきた北朝鮮と、協議を行うのは容易なことではないでしょう。しかしトランプ氏は従来の政治的慣行にとらわれない人ですから、彼が歴代の大統領たちにできなかったことを成し遂げる可能性が高いということもまた事実です。

 トランプ氏は米国が世界を指導しなければいけないとか、世界警察の役割を担う責任があるといったような観念など特に持っていないように見えます。実際彼に重要なのは実質的な利益であって、観念的イデオロギーや思想、信条などではないことは明白です。この点において彼は今までのエリート政治家たちと確然と区別されます。彼は伝統的な同盟である西欧の諸国を他の「外国」と変わらない態度で接しており、西欧の防衛になぜ米国が費用を払うのかと、一見乱暴にも聞こえますが、考えてみれば非常に正当な主張をしています。東アジアの現代史に精通しているブルース・カミングズ教授の言葉をお借りして言うならば、トランプ氏のこのような言動は彼が固定観念にとらわれず、イノセントアイズ(innocent eyes)で今日の世界を見ているからかもしれません。実際、世界に変化をもたらすためには利害関係や固定観念に縛り付けられない、イノセントアイズが必要だと言えます。そのような点において、トランプ氏は私たちが人間的には尊敬できない人物ではありながらも、彼の非主流的かつ異端的性格のために世界の変革に大きく寄与する人物になれるかもしれません。問題は、それが人類を希望と救済に導く変革か、それとも混沌と絶望に追い込む変革かということです。気候変化を無視し、難民や移民に対する彼の乱暴な態度を見ると先を楽観するにはまだ躊躇があります。

 しかしながら、6月12日のシンガポール米朝首脳会談直後の記者会見で、「米韓合同軍事訓練は北朝鮮の立場から見れば非常に脅威的である」といった、相手を思いやる発言を行い、その訓練の暫定的中断を宣言する姿などを見ると、トランプ氏はこの北朝鮮核問題だけは何が何でも解決したいと思っているに違いありません。だからこそ、我々はこの貴重な機会を活用し、今度こそ朝鮮半島及び東アジアの平和共存体制を実現していかなければなりません。

 朝鮮半島の冷戦構造が崩壊され平和体制が構築されれば、東アジア全域の雰囲気も根本から変わってくることでしょう。考えてみれば、互いに相手を思いやりながら相手の生存権利を認めるのであれば、個人や国家が相互間において敵対する理由はありません。にもかかわらず、韓・中・日をはじめとする東アジアの国々はあまりにも長い間敵対ないし嫌悪の関係から抜け出せずにいます。

 このような状況に対する最も大きい責任は、大東亜共栄圏という虚妄な目標の下、東アジア全域をとてつもない災いに陥れた日本が、戦後70年もの歳月が経っても自らの歴史的過ちを虚心坦懐に認め、謝罪する努力を見せてくれないことにあると言わざるを得ません。日本のこのような態度はもっぱら米国との関係ばかりが重要であり、アジア人との関係はどうなっても構わないという、非常に無責任でまた愚かな心理が働いてきたためだと思われます。近代初期の脱亜入欧の論理、つまりアジアに対する蔑視と西洋に対する崇拝の思想は未だ払拭されず日本社会に深く根付いているのではないかと思います。

 もちろん日本社会やその文化の底流には素晴らしい平和思想、共生思想が流れています。明治維新直後の岩倉使節団が帰国した後芽生え、1920~30年代に平和主義者であり、またジャーナリストでもある石橋湛山に受け継がれた「小日本主義」思想はその代表例だと言えます。そしてこの小日本主義の思想的伝統は戦前あるいは戦後において平和と民主主義を信奉する多くの人々の思想の中核を成してきました。問題はこの思想的伝統が一般市民の基本的教養となり、更には政治、経済、社会的性格を規定する原理にならないといけないという点です。そうなってきた際、かつて鳩山由紀夫元総理が唱えた「友愛を土台にした東アジア共同体」の実現は時間の問題になることでしょう。

 振り返ってみれば、鳩山元総理が提唱した「友愛を土台にした東アジア共同体」という概念はこの間東アジア地域に登場した政治哲学の中でも最も新鮮で貴重な政治哲学として評価されるべきでした。しかし鳩山元総理の尊い理想が実現するには当時の東アジアを巡る情勢があまりにも殺伐としていて、またそれは何よりも米国の支配層の利害関係と衝突するものでした。その上鳩山元総理の構想には具体的な方法論が欠如していました。また彼の在任期間も短かったため、今日鳩山元総理の政治哲学を記憶している東アジア人はあまりいないと思います。しかし私は、私の考えている「平和で共生する東アジア体制」と、鳩山元総理の「東アジア友愛の共同体」とが本質的に変わらないと思います。名称は何であれ、このような共同体の実現のために我々が民族や国家の境を越えて協力しない限り、我々に未来は開かないと思います。

 昨年の10月、19次中国共産党大会において習近平主席が唱えた中国の未来像も、結局は似ているものでした。習近平主席は、中国は小康(シャオカン)社会を目指しながら世界が共通に直面している様々な難題を解決すべく他の諸国と緊密に協力することを約束し、殊に美麗社会と生態文明を強調しました。つまり現在東アジアにおいて日本の安倍政権を除けば、東アジアが目指すべき方向についての根本的な認識は共有されていると言えます。

 この認識は今後北朝鮮が進むべき方向に関しても一つの指針になれます。北朝鮮には今後かなりの時間を費やし基本的な生活問題を解決するための産業開発やインフラ構築が必要となるでしょう。そしてその過程において世界資本主義システムへの編入は避けられないはずです。しかしその開発が共同体の崩壊や乱開発、極度の環境破壊、そして不正腐敗の蔓延といったもう一つの怪物社会の出現をもたらすのであれば、その影響は北朝鮮のみならず東アジア全域に及ぶことでしょう。北朝鮮の開発、発展が生態的かつ人間的に如何に健全に行われていくかという問題は北朝鮮社会に限った問題ではありません。

 如何なる視座から見ても今東アジアはお互い反目し、葛藤や紛争に囚われている時ではありません。絶えず北朝鮮と中国の脅威ばかりを強調しながら、人種主義的かつ民族主義的感情を煽る既得権勢力にこれ以上籠絡されてはいけません。ご存知のように今世界は政治的、経済的、社会的、そして環境的に非常に危うい状況におかれています。そういったなか東アジアの国々がお互い敵対し、葛藤することに時間を浪費しているのはナンセンスだと思います。

 朝鮮半島を中心に展開されている最近の情勢の変化は単なる地政学的変化に留まる事態では決してありません。それは我々が自ら閉じこもっている自閉的な枠組みを破り、国家と民族の境界を越え、真の平和な共生を構築できる新たな機会を与えてくれています。この、滅多にない機会を生かすためには東アジアの市民の間の活発な対話と協力が不可欠であると、改めて強調したいと思います。ご静聴ありがとうございました。

2)栗原貞子「崩れぬ壁はない – 三十六年と四十六年と -」

集会の最後の挨拶代わりに、私(田中利幸)が、太平洋戦争46年後の1991年9月22日に栗原貞子が謳った詩「崩れぬ壁はない – 三十六年と四十六年と -」を朗読させていただきました。

「崩れぬ壁はない – 三十六年と四十六年と -」

前の三十六年は
皇国臣民の誓いを誓わされ
一視同仁の天皇の赤子で
東方遥拝をさせられ
アマテラスを拝まされた

戦争が始まると百万人が徴募され
けがれを知らぬ少女たちは
天皇の軍隊の慰安婦にさせられた
男たちは強制連行されたあげく
ヒロシマ ナガサキでは
原爆に焼かれて 黒い死体になり
カラスに眼球を啄まれた

戦争が終わると祖国は
二つに分断され
分断された胴体から今も
おびただしい血が流れている
ひとつの国として
解放される筈だったのに
天皇制護持のため
おそすぎた 終戦の詔書

民族の胴体をたちきられ
裂かれた半身を 互いに呼びあいながら
生きてきた四十六年
北の半身は 主体思想をかかげて
外国の支配を斥け
白頭山の下で 新しい国を育ててきた
南の半身は千の核兵器をのせられ
若ものは光州で血を流し
ソウルで焼身自殺をして
自由と民主を求めて闘った

併合の三十六年間と
戦後の四十六年間と
朝鮮半島を血の海で溺らせ
朝鮮戦争では 神武景気で
肥え太り 経済大国となって
何の痛みも感じることなく
謝罪せず 拒みつづけて来た
アジアの国々への血債にも
口をぬぐい
その手は未だ血塗られたまま
国際貢献の名の下に
再び戦場を夢見る世界第三位の
軍事大国

北と南の被爆者と 日本の被爆者が手を結び
分断の壁に風穴をあけよう
核のないひとつの朝鮮をとりもどそう
沖縄や本土の核基地を
撤退させよう その時、
非核自由アジアは実現するのだ

どんな堅固な壁も
民衆の意志のあるところ
崩れぬ壁はないことを
ベルリンの壁は教えている
世界の三つの壁の
さいごの壁が
崩れる日は遠くない

  西日本豪雨被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。3週間近くたち、だいぶ、落ち着いてきたところ、いまだに復旧のめどが立っていないところ、呉市のように国道31号線は開通したものの、JR線不通、広島呉道路の復旧は11月まで見通せず広島市街地に2~3時間もかかり通常の生活に戻れないところなど、断水がいまだに続いているところ、いろいろお聞きします。連日支援されている方々に頭が下がります。
 被災者の皆さんの生活再建が一日でも早くなされるよう、安倍政権の悪政と対峙していく必要があります。安倍自民党・公明党連立政権は、被災者支援よりもカジノ法成立という正直な政治判断を行いました。この反民衆的な政権を多くの人の大衆運動で根本的に打倒しましょう。延長通常国会は閉会しました。この3月7日、立憲民主、希望、無所属の会、共産、自由、社民の6野党は、住宅が損壊した被災者への支援金の最高額を300万円から500万円に引き上げることを柱とした被災者生活再建支援法改正案など復興関連4法案を衆院に共同提出していました。これに関する国会審議はされませんでした。
 被災者への公的支援拡充、「住宅は基本的人権の問題」という価値観への転
換を訴えつつ、被災者への義援金支援を訴えます。以下の社会福祉法人中国新
聞社会事業団の義援金受け付けを紹介します。

http://www.chugoku-np.co.jp/jigyodan/

 なお、「ヒロシマ スタディ ツアー 2018」のコースを呉から岩国に変更いたします。西日本豪雨災害での全国15府県での死者224人(警察庁23日)のうち、広島県内で亡くなった方は112人(中国新聞集計では107人)。行方不明者7人。住宅被害12100棟、避難者数1151人。岡山県内の死者61人、行方不明者3人、住宅被害15249棟、避難者数2609人。愛媛県内の死者26人。
 とりわけ、広島県内では、呉市、坂町、広島市安芸区、熊野町、東広島市、三原市の被害が甚大でした。積乱雲の位置が少し違うだけで豪雨被害地は違うし、同じ町内でも土砂や水害でやられているところとやられていないところがあり、地震被害とは違う側面があります。広島県南部の斜面崩壊は、5064か所(広島大豪雨災害調査団)あったということです。様々な課題があるでしょうが、日常的にも行政障害福祉サービスにつながっていないメンタル面に課題を持つ人が在宅で茫然自失となっている可能性もあります。

 阪神・淡路大震災で被災した経験から被災者への公的支援を求め、「これは人間の国か」という怒りから、被災者生活再建支援法の成立につなげた故・小田実さんらの運動を思い起こします。自衛隊が救援、復旧で大きな力を発揮していますが、市町や県の機関ではなく国の機関なので当然です。その実力を災害救助に特化した災害救助隊に根本的に生まれ変わらせるべきときです。国難は、外からやってこず、減災・防災(原子力災害を含む)、救済に予算を投入しない日本列島の政府自身からやってくるであろう。そのような安倍政権を打倒し、東日本大震災後の復旧・復興工事を含め、それらの被災からの復興を阻害している無駄遣いのみの2020東京オリンピック開催を即刻中止すべきであると言いたいです。かつて革新勢力は、「軍事費削って福祉を」との明確なスローガンがありました。今日、それに加えて、「軍事費削って防災費を」「防衛省を無くして防災省を」とのスローガンを打ち出すべき時です。ひとり一人の命の尊さを確認する、8・6ヒロシマ、8・9ナガサキでお会いしましょう。   

                      (7月24日)

(以下、参考)
http://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon7/pdf/300722_h30typhoon7_01.pdf
【概要版】平成30年7月豪雨による被害状況等について
7月22日06時00分現在
内閣府防災担当

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/index.html
災害教訓の継承に関する専門調査会

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/pdf/saigaishi_huusuigai_kasai.pdf
災害史に学ぶ 風水害・火災編

http://ascii.jp/elem/000/001/710/1710874/
西日本豪雨の教訓、「国難級災害」に減災の備えが必要だ
週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン)から
2018
0717 0600分更新

 

 

 



        
ダウンロード→チラシ表 PDF
(1.5M)  チラシ裏 PDF(0.5M)

◆8・6ヒロシマ平和へのつどい2018呼びかけ人

呼びかけ人

浅川泰生(ジャーナリスト)/
足立修一(弁護士、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表)/
石岡敬三(グローイングピース)/
石口俊一(弁護士、広島県9条の会ネットワーク事務局長)/
上羽場隆弘(九条の会・三原)/
大月純子(福島原発告訴団・中四国 事務局)/
大野明彦(郵政産業労働者ユニオン広島中央支部長)/
岡原美知子(日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク 事務局長)/
岡本珠代(第九条の会ヒロシマ)/
小武正教(念仏者九条の会)/
郭 文 鎬(在日韓国民主統一連合広島本部 代表委員)/
木原省治(原発はごめんだヒロシマ市民の会代表)/
木村浩子(YWCA We Love9)/
久野成章(環境社会主義研究会)/
坂田光永(市民SOHO蒼生舎)/
佐々木 孝(第九条の会ヒロシマ)/
実国義範(平和を創造する市民ネットワーク)/
城山大賢(「九条の会 山県」代表)/
杉谷宏幸(郵政産業労働者ユニオン安芸府中支部長)/
高橋博子(名古屋大学研究員)/
竹本和友(ピースサイクル広島ネットワーク事務局長)/
竹原陽子(原民喜文学研究者)/
伊達 工(ピースサイクル全国ネットワーク共同代表)/
田中繁行(ピースリンク広島・呉・岩国)/
田中利幸(歴史家)/
田村順玄(岩国市議、ピースリンク岩国世話人)/
坪山和聖(日本軍「慰安婦」問題を考える会・福山)/
土井桂子(日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワーク)/
長尾眞理子(YWCA会員)/
中峠由里(YWCA We Love9)/
永冨弥古(一般財団法人呉YWCA会長)/
難波郁江(広島YWCA会員)/
西岡由紀夫(ピースリンク呉世話人)/
新田秀樹(ピースリンク広島世話人)/
服部 浩(郵政産業労働者ユニオン呉支部長)/
日南田成志(ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)・広島)/
平岡典道(ピースリンク広島・呉・岩国)/
平賀伸一(広高教組平和教育推進委員長)/
藤井純子(第九条の会ヒロシマ)/
藤本講治(広島県原水禁前事務局長)/
堀 伸夫(現代史研究者、被ばくの歴史・平和学市民コンソーシアム全国事務局)/
増田正文(郵政産業労働者ユニオン広島支部長)/
三嶋研二(郵政産業労働者ユニオン中国地方本部委員長)/
宮崎美樹(郵政産業労働者ユニオン広島東支部長)/
村田民雄(市民運動交流センターふくやま代表)/
溝田一成(脱原発へ!中国電力株主行動の会)/
山川 滋(教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま)/
山田延廣(弁護士、広島弁護士会)/
山田禮正(人民の力山陽協議会)/
横原由紀夫(広島県原水禁元事務局長)/
吉田正裕(東北アジア情報センター運営委員)/

全国賛同人

天野恵一(反天皇制運動連絡会)
浦田賢治(早稲田大学名誉教授)
梶野 宏(反安保実行委員会)                
木村雅英(経産省前テントひろば)               
国富建治(「反改憲」運動通信)
中北龍太郎(弁護士、関西共同行動共同代表)                
藤澤宜史(神奈川県民)
舟越耿一(長崎大学名誉教授)                            
武藤一羊(ピープルズ・プラン研究所)
村上啓子(被爆者)                                   
湯浅一郎(ピースデポ)
渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク)

賛同団体

アジェンダ・プロジェクト/
ピースリンク広島・呉・岩国/
第九条の会ヒロシマ/
ピースサイクル広島ネットワーク/
郵政産業労働者ユニオン中国地方本部/
ピースサイクル全国ネットワーク/
東北アジア情報センター/
人民の力/
環境社会主義研究会/
被ばくの歴史・平和学市民コンソーシアム全国事務局
在日韓国民主統一連合広島本部/

 

 

 ◆関連企画 フィールドワーク

                ダウンロード➡スタディーツアー  
                   ダウンロード➡原民喜

「市民による平和宣言 2018」(PDFダウンロード)

- 朝鮮戦争と安倍の嘘を終わらせ、憲法9条を生かす時代を切り開こう -

 1944年末から始まった米軍による日本の本土空爆は翌年8月の14日まで毎日のごとく続き、最終的に16万8千トンにのぼる爆弾・焼夷弾を投下した。その結果、東京、大阪をはじめ日本全国の393市町村の人々が無差別爆撃の犠牲者となった。そのうえ、1945年8月6日、9日の原爆無差別大量殺戮では、推定21万人(内4万人が朝鮮人)を殺害。米国が犯した日本市民無差別爆撃という重大な「人道に対する罪」の推定死傷者総数は102万人(その7割が女性と子ども)、その半数以上の56万人が死亡者と言われている。さらに沖縄戦では15万人にのぼる市民の命が奪われた。しかし、その日本は、15年間にも及ぶ無謀な侵略戦争で、推定2,100万人という数の死傷者の犠牲を中国に、その他にも数百万という数にのぼる死傷者の犠牲をアジア太平洋の様々な住民に強いた国であり、朝鮮半島を36年も植民地支配した。

 米国は、自国の戦争犯罪を隠蔽しながら、この未曾有の悲劇をもたらした責任者の一人である天皇裕仁を、日本占領政策を円滑にすすめるため、とりわけ急速に高揚しつつあった共産主義活動とその思想浸透を押さえ込んでいくために、政治的に利用することを決定した。裕仁の「戦争犯罪と戦争責任」を帳消しにする形で、1946年11月3日に公布した日本国憲法の第1条で天皇を日本国と日本国民統合の象徴とした。よって、天皇は戦争責任に対する無責任の象徴でもある。しかし、幸いにして私たちは、この新憲法で、世界の全ての人々に平和的生存権があることを確認した「憲法前文」と、無条件での非戦・非武装主義を謳う9条を獲得した。

 ところが1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発するや、「警察予備隊」という名称で軍隊を創設し、早くも非武装憲法の骨抜きが開始された。1952年に、サンフランシスコ講話条約によって日本は一応「独立」を回復したが、講和条約と同時に締結された第一次安保条約で米軍に基地を提供し続けることになり、沖縄は軍事植民地化され、「自衛隊」と改称された軍隊は米軍の冷戦戦略に強固に組み込まれた。かくして、日本の米軍基地は朝鮮を空爆する爆撃機の発進・補給基地となり、アジア太平洋戦争で疲弊していた日本経済は「朝鮮特需」の恩恵を受けて急速に復興した。以後、在日米軍基地は、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争という米国の侵略戦争の出撃拠点となり続けた。

 2015年、ついに安倍政権は、部分的集団的自衛権行使すら合憲との解釈改憲で戦争法を制定した。このように、朝鮮戦争勃発から68年の間に、南北朝鮮分断、アジア冷戦、沖縄軍事植民地化、日米安保強化、核抑止支持などの様々な要因が、9条を破壊する因子として日本国の中に埋め込まれてきた。したがって、これらの憲法破壊因子を取り除き、9条を真に復活させるためには、私たちは、もう一度、朝鮮戦争の原点にまでさかのぼり、朝鮮戦争を完全に終わらせる必要がある。

 4・27南北朝鮮首脳会談と6・12米朝首脳会談の成功は、新しい時代への扉をこじ開けた。韓国民衆の平和のための闘争が、この好展開の起動力となっている。次は、南・北・米・中4者会談の開催による朝鮮戦争の終結宣言である。これにより朝鮮戦争体制を前提としてきた在韓米軍と在日米軍の存在根拠が無くなり、日米安保体制が大きく激変する。沖縄や岩国などの米軍基地廃止に向けた運動を強化することで、朝鮮半島民衆、北東アジア民衆に連帯しうる可能性をたぐり寄せよう。

 狭隘な愛国主義的憎悪で腐れきった安倍政権は、こうした動きを妨害しようと躍起になっていたが、さすがに日朝交渉を突然言い出した。しかし、拉致問題を正面に据えて交渉しても何も解決できない。侵略戦争の謝罪、戦後賠償としての経済協力という大きな枠組みの中でしか、拉致問題を解決する展望はない。私たちは日朝国交正常化交渉を誠実に行うことを日本政府に求める。

 安倍政権が森友・加計問題で虚偽の発言を続けていることは誰の目にも明らかだ。また、原発被害(汚染水垂れ流し、増える健康被害など)は最早なくなったと嘘をついて住民強制帰還や住宅補償打ち切りを行い、「女性の活用」と嘘をつきセクシュアル・ハラスメント蔓延を放任し、「働き方改革」法でも嘘をついて長時間労働と正規・非正規格差を野放しにし、沖縄米軍基地負担軽減と嘘をついて辺野古基地建設強行をやり、北朝鮮核脅威と嘘をついて防衛予算を膨張させ、そのうえ西日本豪雨被災者救援よりはカジノ法強行採決、という嘘の政策で塗り固められた政権である。

 ドイツの哲学者、カール・ヤスパースは「不真実は本来的に悪であり、あらゆる平和の破壊者である」と述べた。安倍晋三首相のような人物の「平気で嘘をつく能力」は、したがって平和に対する攻撃的能力である。また、嘘をつく能力は他人と自分自身の記憶を歪めたり抹殺する能力でもるから、南京虐殺、強制連行、日本軍性奴隷などはなかったと人々の記憶を抹殺しようとする彼の「戦争責任否定」は、「嘘をつく能力」と密接に絡みあっている。現在と過去を嘘で支配しようとするのは、彼が私たちの未来をも嘘で支配したいからだ。一刻も早くこんな「大嘘ツキ政権」を打倒しよう!

      8・6ヒロシマ平和へのつどい2018実行委員会 代表:田中 利幸
      連絡先☎090-4740-4608(久野 成章)
      FAX:082-297-7145  Eメール:kunonaruaki@hotmail.com



2018 Citizens’ Peace Declaration  August 6, 2018(PDF Download)

– Let’s finish the Korean War, condemn Abe’s lies and revitalize Article 9 –

          (Coordinator and Author: Yuki Tanaka Email: yjtanaka68@yahoo.co.jp)  
Between the end of 1944 and August 14 1945,
the U.S. conducted aerial bombings of Japan’s main islands almost every day, and used 168,000 tons in total of both conventional and incendiary bombs. As a result the people of 393 cities, towns and villages throughout Japan became the target of indiscriminate bombings. In addition the atomic bombings of Hiroshima on August 6 and Nagasaki on August 9 annihilated approximately 210,000 people including 40,000 Koreans. The estimated total number of casualties from these American crimes against humanity is 1.02 million including 560,000 deaths. 70% of them were women and children. Furthermore, in the battle of Okinawa 150,000 civilians were killed. On the other hand, the reckless 15 year-long war that Japan conducted between 1931 and 1945 victimized 21 million Chinese as well as several million people in various other parts of the Asia-Pacific. Japan also kept the Korean Peninsular under its colonial rule for 36 years.  

  After World War II the U.S. concealed its own war crimes. It decided to politically exploit Emperor Hirohito, the person most responsible for wartime Japanese atrocities, in order to suppress the rising communist movements in Japan and thus manage smoothly the U.S. military occupation of that nation. With this intention, in Chapter 1 of Japan’s new constitution promulgated on November 3, 1946, the emperor was portrayed as the symbol of the state of Japan and the unity of the Japanese people, writing off his war crimes and responsibility. In other words, Hirohito was actually the symbol of irresponsibility for Japan’s war of aggression and war crimes. Fortunately, however, our universal right to live in peace was officially recognized in the preamble of the constitution, and Japan’s commitment not to fight a war with military forces was proclaimed in Article 9.

  As soon as the Korean War broke out on June 25 1950, Article 9 was weakened by the establishment of military forces under the fake name of the National Police Reserve. The San Francisco Peace Treaty of 1952 made Japan perfunctorily “independent.” Yet with the U.S.-Japan Security Treaty, which was concluded almost simultaneously with the Peace Treaty, the U.S. was able to permanently utilize its military bases on Japanese soil. Okinawa was virtually colonized; and the renamed Self Defense Forces were firmly built into the U.S. military’s cold war strategy. Japan thus became the takeoff and supply base for the U.S. bombers utilized in the Korean War, and the Japanese economy ruined by the Asia-Pacific war was rapidly revitalized through U.S. special procurements. Since then, these U.S. military bases have been continuously utilized for U.S. wars of aggression in Vietnam, the Gulf, Afghanistan and Iraq.

  In 2015 the Abe administration reinterpreted Article 9 of the Japanese constitution in order to approve the exercise of the right of collective self-defense. It also passed unconstitutional security-related legislation. In this way, during the last 68 years since the beginning of the Korean War, many things have undermined Japan’s Article 9. They are: Korea, divided into north and south; the cold war in Asia; the military colonization of Okinawa; the incessantly expanding U.S.-Japan Security Treaty; and the perpetual U.S. nuclear deterrence. In order to eliminate these destructive factors and revitalize Article 9 of our constitution, we need to trace back to the beginning of the Korean War and completely end that war.

  The Korean summit talks on April 27 this year and the U.S.-North Korea summit talks on June 12 opened the door on a new age. The motivating power for this change is undoubtedly the Korean peoples’ movements for peace. To end the Korean War, a summit conference of North and South Korea, together with the U.S. and China, is essential. If the war ends legitimately and successfully, justification for maintaining the U.S. bases in Korea and Japan also becomes invalid, and accordingly the U.S.-Japan Security Treaty must also change. We need to explore opportunities to strengthen solidarity with people on the Korean Peninsular and other parts of East Asia, reinforcing our actions and abolishing the U.S. military bases in Japan such as Okinawa and Iwakuni.

  The corrupt Abe administration, with its strong nationalist sentiments and deep hatred of Koreans, initially tried to obstruct the Korean effort for peace. Having realized that would not be possible, however, Prime Minster Abe proposed negotiation over the issue of Japanese people abducted by North Korea. But it is clear that the abduction issues could not be solved without Japan’s apologies for wartime forced Korean labor; proper compensation for that; and economic cooperation with Korea. We demand that the Japanese government sincerely and promptly deal with these matters and normalize our relationship with North Korea.    

 The present government’s policies are full of falsehoods on many fronts. It is clearly not telling the truth about the corruption cases of Moritomo and Kake. It has suspended financial aid to the victims of the Fukushima Nuclear Power accident, claiming that radiation is no longer a serious problem and now forcing them to return home. It continues to ignore rampant sexual harassment problems despite its official policy of “Empowering Women.” It endorses low pay and long hours of hard work for non-regular workers despite the fake policy of “Work Style Reform.” It is enforcing the construction of the new U.S. military base at Henoko despite the promise to “reduce the burden on Okinawa.” It is inflating the military budget despite the recent alleviation of tensions on the Korean Peninsular.       

  The German philosopher Karl Jaspers once said that insincerity is essentially evil and destroys all forms of peace. According to this Abe’s ability to boldly tell lies could potentially destroy peace. Moreover, it has the capacity to distort or erase peoples’ memories, including those of Japanese wartime atrocities such as the Nanjing Massacre and the military sex slaves. Abe tells lies about the past and present, because he wants to control our future with lies. To stop this, we must overthrow the Abe regime as quickly as possible!


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